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あとがき
涌井 昌俊
pp.116
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048514200690010116
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今月号の特集テーマは「検査のコツ教えます!」ですが,コツは漢字で書くと「骨」です.“体を支える堅いもの,ものの中心にあって全体を保持するもの”である骨の本来の概念から派生して,“要点,急所,要領,要点,ポイント,手はず,手順,手際”をコツは意味します.しばしばコツと並んで論じられるカンは漢字で「勘」と書き,“論理や推察などに頼らない感覚的な物事の捉え方”を意味します.コツは言語化・数値化できるため人による共有や継承に向いていますが,カンは言語化・数値化が難しく共有や継承が容易ではありません.
そのようなカンを人に代わってAIに学習させることで普遍的に共有や継承を可能にするというアプローチが試みられています.しかし,AIでさえも簡単にカンを手に入れるとは限りません.人間なら重さや大きさをいちいち計測せずに,視覚と物を手にした際の質量感に基づいて瞬時に判断して片付けや整理ができますが,AIやロボットにとっては長年の間とても厄介な課題だったようです.ただし,ここ数年の技術的進歩のおかげで,AIが入手できる“カン”のハードルは着実に下げられています.加えて,AIは学習を通じて人が思いつかないような特徴量を抽出し,それを駆使して答えを導くことができるので,人知を超えた新たなコツやカンを生み出すことも予想されます.
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