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あとがき
伊藤 喜久
pp.340
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102971
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尿路結石は今や生活習慣病に位置づけられ,発症頻度も高く再発しやすく予防治療が難しいなど多くの課題を抱えていています.尿検査では重要な位置を占めるにもかかわらず,ともすると取り組みがいまだ十分なされていない領域の一つであり,新しい視点からさらなる検査研究,サービスの充実を求めて,今月の主題として初めて取り上げました.尿路結石の新しい研究,診療,検査の進歩について具体的に大変わかりやすくご執筆いただいた諸先生に,心から御礼申し上げます.また企画にあたり,貴重なご助言をいただきました山口 総先生(富良野協会病院尿路結石治療センター長)に深謝いたします.
結石の形成にかかわると思われる事象に日常よく遭遇します.尿を冷蔵庫に入れると,ものの数分で濁り沈殿物が出現してきます.これを遠心分離して上清を採って再度冷蔵するとまた濁り,これが幾度も繰り返えされます.沈殿物を取って顕鏡すると,結石成分のコアとなる結晶が観察されます.EDTAなどのキレート剤を加えると沈殿量は減少することから,少なからずCaが主成分であることが推測されます.われわれの尿はある意味でCaを初めとする塩類が過飽和の状態にあると言えそうです.今度は尿を-20℃に凍結してみます.融解後もやはり濁り沈殿物がみられ,遠心して上清のアルブミンを測ってみますと,凍結前よりも20%濃度が低下しています.ところがVortex mixerで撹拌して沈殿物を混和した後に測定しなおすと凍結前と変わりがない.つまり,アルブミンは沈殿物に巻き込まれていることになります.
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