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ホルモンは,特定の臓器,組織から体内に分泌され,血液,体液により遠隔の臓器,組織細胞に運ばれ,ここで機能促進,抑制に作用する生理活性物質です.今や微小環境に作用し,血液凝固,免疫応答など広く生体全体の機能を制御する物質として位置づけられています.近年の分子生物学の飛躍的な進歩により,細胞レベルでホルモンの産生から作用機序まで,新たな知見が数多くもたらされています.
検査として生物活性測定は煩雑で,ほとんどが抗原抗体反応の原理に基づく免疫測定法により質量濃度として測定されています.一般的に低分子であることから,affinity・avidity・specificityの高い抗体はなかなか得られません.さらにはBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド),NT-proBNPにみられる交差反応が,PSA(キモトリプシン様物質)では遊離型と高分子重合体との間のequimolarityを乗り越えなければならず,これらが科学的に解決されたとしても実際の臨床の現場における診療能を高めるために,極端に言えば測定値を合わせる形での妥協が求められるなど,個別に細かに対処する難しさがあふれています.将来,核酸アプタマーが,成分特性にマッチして新たな武器として見いだされるかもしれません.すべてとは言えないまでも,MS(質量分析法)は確かに新たな時代の到来を象徴するものです.その開発自体が臨床的意義の拡大に直結しており,例えばステロイドホルモンの測定は,ステロイド病態解析プロファイルを即実現します,今やトリプシン処理後のアミノ酸フラグメントにより検量線が立てられ,完全構造によるものと全く遜色がない結果が得られる成分も登場してきました.Berson,YalowのRIA(ラジオイムノアッセイ)から始まり,MSに至る,蛋白質検査のコアはまさにホルモンにあり,確固たる研究基盤の伝統は生き続けています.
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