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あとがき
伊藤 喜久
pp.706
発行日 2010年6月15日
Published Date 2010/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102329
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人は生を授けられてから,加齢という一方通行の時間軸のなか,ある意味で炎症と腫瘍の谷間をくぐりぬけながら一生の歩みを続ける.炎症は生体内外の刺激に対し反応し修復に至るまでの一連の免疫応答であり,このなかにあってサイトカインは炎症を主に局所微小環境における細胞間相互作用により,恒常性を維持する役割を担う低分子糖蛋白である.近傍細胞,自身の細胞をも標的とし特異的リセプターと結合,細胞内シグナル伝達を介して多様な作用を示す.炎症は時に遷延慢性化,あるいは悪性腫瘍をもたらす.生体防御と同時にその機能の破碇は直接的,間接的に異常病態の発症をも導く.
今や200を超える成分が同定され,複雑な病因ネットワークのなかから基軸となる成分が病態ごとに同定されて,より根源的な病因の引き金の解明へと迫りつつある.30年以上にわたるサイトカイン研究の積み重ねのなかから,抗TNFα抗体,可溶性リセプターによる関節リウマチ治療という大きな成果がもたらされた.また,最近健常者を対象として進めている基準範囲の設定においても,若年段階からBMI,腹囲,血清脂質濃度などと血清CRP,SAA濃度との高い関連性が認められ,脂肪細胞の増殖,肥大により産生されるサイトカイン群が密接にかかわることも明らかにされている.
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