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あとがき
伊藤 喜久
pp.938
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102748
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RNAの歴史は1950年代のWatsonとClickによるDNAの構造解明の以前にまでさかのぼります.分子生物学の発展と相まって,1970年代にはsplicing,1980年代にはRNAの触媒作用,さらにはテロメラーゼの複製,1990年代には今日的話題であるRNA interference(RNAi)による遺伝子発現の抑制が見出されました.そして,2000年に入るとnoncoding RNAがさらに注目され,今日のRNA worldの興隆を迎えます.2006年にはRNAiの発見に対しAndrew Fire,Craig Melloらがノーベル生理学医学賞を受賞しています.
動物種の全ゲノム塩基配列が決定され明らかとなったのは,ヒトとマウスの構造遺伝子はサイズも塩基配列もほとんど差異がなく,哺乳動物としての本質的な部分が確実に保持されているということでした.悠久の時間の中で全く偶然の織り成す所産として,いわゆる進化とその方向性を定めるものは設計図であるゲノム配列とその多様性(構造遺伝子間領域),修飾構造変化変異によるものであるとして,複雑な外部,内部環境の変化にしなやかに順応して生命活動を維持し進化・分化・成熟に実効的に作用するRNAの中に,個体の発生進化,誕生から死に至る生命活動の本質を自ら知る糸口を,ヒトは確実に手に入れたように思われます.
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