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あとがき
伊藤 喜久
pp.752
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102011
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本特集が出まわる梅雨から夏にかけて,本格的な食中毒のシーズンを迎えます.2008年度の農林水産省の統計によると年間1,300件,33,000人で,因果関係が不明で軽い腹痛,下痢程度で届けがなされないものを含めると,実際の発症数はかなりのものに上るものと思われます.一人当たりの頻度はやはり夏季の高温多湿な宮崎,兵庫など西日本に集中しますが,暖房が完備された冬の時期にも毎月1,000人以上の食中毒患者が出ていると言われています.
これまでは細菌感染がほとんどでしたが,最近ではウイルス6割,細菌4割と様変わりし,とりわけ医療施設,老人介護施設などでのノロウイルスが席巻し続けています.以前から考えられたような貝類の生食による本来の食中毒としての感染に加え,キャリアー状態から施設内感染としてアウトブレイクするものが少なくありません.コレラ感染もしかり.食品中で増殖した病原微生物が直接原因にかかわる古典的なものから,ヒトが介在する集団感染症として変貌したことも見逃せません.
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