特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査
各論
2.微生物別の種類別にみた施設内感染制御
1) 細菌 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
朝野 和典
1
Kazunor TOMONO
1
1大阪大学医学部感染制御部
キーワード:
多剤耐性緑膿菌(MDRP)
,
アウトブレイク
,
コリスチン
Keyword:
多剤耐性緑膿菌(MDRP)
,
アウトブレイク
,
コリスチン
pp.1340-1342
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102120
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はじめに
多剤耐性緑膿菌(multi drug resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)は,今日,最も重要な院内感染対策の標的細菌である.多剤耐性細菌としては,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が問題となることが多いが,MRSAとMDRPを比べると特徴が明らかとなる.まず,第一に決定的に異なるのは,MRSAには,塩酸バンコマイシン(VCM)やリネゾリド(LZD)をはじめとする有効な抗菌薬が複数種類存在することである.今日世界的に問題となっているバンコマイシン耐性MRSAですら,リネゾリドは有効である.一方,MDRPは,唯一コリスチンが有効である以外は,ほとんどすべての抗菌薬が無効であり,しかもコリスチンはわが国では使用が承認されていない.すなわち,本邦で有効な抗菌薬は皆無の耐性菌であり,いったん感染症を発症すると,治療は極めて困難な感染症となる.
このようなMDRPの特徴を知り,また感染対策を理解することで感染症を予防し,適正抗菌薬の使用により感染症の発症を予防することが第一の方策である.感染症に対しては,抗菌薬の併用による相加・相乗効果を期待する.
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