今月の表紙 臨床微生物検査・12
多剤耐性緑膿菌
平泻 洋一
1,2
Yoichi HIRAKATA
1,2
1東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野
2東北大学病院検査部
pp.1518-1520
発行日 2008年12月15日
Published Date 2008/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101849
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1.多剤耐性緑膿菌とは?
緑膿菌は黄色ブドウ球菌とともに臨床材料から最も高頻度に分離される細菌である.敗血症,肺炎,慢性気道感染症,胆道系感染症,皮膚軟部組織感染症,眼科領域感染症など,多彩な感染症の原因となる.図1は慢性気道感染症の患者の喀痰のグラム染色像であるが,慢性・持続性感染症では緑膿菌はしばしばこのようにムコイド状の外観を呈する.現在,緑膿菌感染症に対しては,一部のセフェム系薬(モダシンTMなど),カルバペネム系薬(メロペンTMなど),フルオロキノロン系薬(シプロキサン注TMなど),アミノ配糖体系薬(アミカシンなど)が使用されるが,これらに耐性を示す場合,現存の抗菌薬では治療効果が期待できない.
1999年に施行され,2003年10月に改定された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」では,カルバペネム,フルオロキノロン,アミノ配糖体の3系統の抗菌薬に耐性を示すものを多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)とし,これによる感染症を「薬剤耐性緑膿菌感染症」として5類感染症に分類し,定点報告の対象とした.表1に感染症法による検査室での判断基準を示す1).
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