特集 ポストコロナの感染症
輸入感染症
多剤耐性アシネトバクター,多剤耐性緑膿菌,カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の世界の現状
小野 大輔
1,2,3
1埼玉医科大学 総合医療センター感染症科・感染制御科
2Case Western Reserve University
3Cleveland VA Medical Center
pp.348-352
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023030010
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
輸入感染症としての薬剤耐性菌対策
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)のパンデミックは本稿執筆時点においてはまだ収束の見込みはないものの,ワクチンの普及などを背景として,発生当初に比べると海外への渡航制限は緩和されつつある.海外への往来が戻るにつれ,輸入感染症の症例数も以前のように増えることが予想される.「輸入感染症」というとマラリアやデング熱といった熱帯感染症が想起されやすいが,海外からの薬剤耐性菌の持ち込みについても,わが国と海外とでは疫学(頻度や流行しているタイプなど)が大きく異なっているため,輸入感染症の視点から捉える必要がある. 薬剤耐性菌には多くの種類があるが,本稿で扱う多剤耐性アシネトバクター,多剤耐性緑膿菌,カルバペネム耐性腸内細菌目細菌は,わが国と海外とではとくにその疫学が大きく異なる.これらの耐性菌は抗菌薬に対する耐性度がきわめて高いため,海外での医療曝露(入院歴,手術歴など)がある高リスクの海外渡航者などによってこれらの菌が持ち込まれ,医療施設内で伝播・拡散してしまうと,感染管理や治療の面で影響は甚大である. 本稿ではこれら3つの薬剤耐性菌の概要について世界の現状を踏まえ説明し,最後には実際にどのように対応すべきかについても,私見も踏まえて述べていきたい.
Copyright© 2023 NANZANDO Co.,Ltd. All Rights Reserved.