Special feature 知る・学ぶ・実践する 水回りの感染制御
■Case アウトブレイク事例を知る―発生から終息までの実際
❷多剤耐性緑膿菌(MDRP)
山水 有紀子
1
1日本赤十字社広島赤十字・原爆病院 感染管理室 看護師長 感染管理認定看護師
pp.262-267
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000153
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はじめに
アウトブレイクとは,「一定期間内に,同一病棟や同一医療機関といった一定の場所で発生した院内感染の集積が通常よりも高い状態のこと」と定義されている1)。アウトブレイクの兆候を認めた場合は,感染の拡大を防ぐために,できるだけ迅速に対応する必要がある。なかでも,多剤耐性緑膿菌(Multidrug-Resistant Pseudomonas aeruginosa:MDRP)などの多剤耐性グラム陰性菌については,保菌も含めて1名でも分離されたらアウトブレイクを疑い2),迅速かつ厳重な対応が求められる。
MDRPは,複数の抗菌薬に耐性を持つこと,一度検出されると一生保菌しやすいこと,接触感染により人の手や環境を介して拡がること,などの理由から感染制御を行う上で問題となる。また,湿潤した環境に定着しやすく,一旦環境に定着するとなかなか除去しにくいため,リザーバーとなりアウトブレイクを起こす要因にもなる。
広島赤十字・原爆病院(当院)では2016年にA病棟の患者からMDRPが新規検出され,同じ時期に同病棟の水回りからも同菌が新規検出がされ,アウトブレイクが発生した。
本稿では,このアウトブレイク事例と実施した伝播予防策,および水回りを中心に実施した環境管理について報告する。
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