特集 2035年に生き残る病院組織論
現代日本の病院組織の特徴と経営課題—組織論とイノベーション経営の視点から
川村 尚也
1
1大阪市立大学大学院経営学研究科
pp.188-192
発行日 2017年3月1日
Published Date 2017/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210436
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●米国病院組織研究では,病院組織は複数機能・目的をもつ高度に複雑な規範的ヒューマンサービス組織であり,高度な専門知識・技能・業務を独占し患者を統制する複数の専門職が,職種間・内で競争しつつ官僚制による統制と対抗する,「専門職官僚制」とされる.
●一般企業と比べ非競争的な患者市場とより競争的な労働市場,政府と職能団体による「弱い経営」のもとで,日本の病院組織は,専門経営者ではなく医療職が主導する専門職官僚制となり,組織の内部調整の時間・コストの増大,患者価値と労働者価値を向上させるイノベーションの抑制が懸念される.
●患者による価値決定が複雑・困難なサービスを提供する病院組織では,一般企業の経営技法の多くは有効性が限定されリスクも高い.イノベーションを促進するには,患者と病院職員が共同でより善い社会を探求・構築する,高度に複雑・創発的な組織が必要である.
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