特集 ワクワクする病院組織づくりは可能か—人間重視の病院組織マネジメント
病院の組織マネジメントのあり方
現代日本の病院の組織マネジメントと人材マネジメントのあり方
川村 尚也
1
1大阪市立大学大学院都市経営研究科
キーワード:
専門職官僚制
,
医療労働市場
,
ケア
,
創発
,
倫理的リーダーシップ
Keyword:
専門職官僚制
,
医療労働市場
,
ケア
,
創発
,
倫理的リーダーシップ
pp.1034-1037
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211570
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■複雑な内部機構と「二重の権限構造」をもつ多目的・機能組織
まず,現代日本の病院組織の特徴とマネジメントの課題を検討しておきたい1).米国では1960年代以降に病院組織の実証研究が多数蓄積されてきた.これらの研究によれば,病院組織は患者の治療,医学の研究,医療者および患者の教育,放置すれば社会活動の妨げになる患者の収容などの複数の目的・機能を同時に追求する「多目的・機能組織」である.このためそれらは「専門職profession」の自律的な業務遂行権限と,近代公式組織(「官僚制bureaucracy」)の規則・計画的な業務管理権限が併存する,「二重の権限構造」2)をもつ.
医師や看護師などの近代専門職は,高度に公式化された科学的知識に基づいて,制度的に分業され「独占」を認められた業務を自律的に遂行しようとする3).一方,近代公式組織(官僚制)は,規則に基づく水平・垂直的分業と計画によって業務の効率性を追求する.病院組織は,患者個々のニーズに対応して診療サービスの有効性(柔軟・即時性)を追求する専門職原理と,組織の全ての活動の効率性(規則・計画性)を追求する官僚制原理との対立4〜6)を内包しており,「専門職官僚制professional bureaucracy」7)とも呼ばれる.
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