連載 病院管理フォーラム
■院内感染対策―医療監視の立場から・5【最終回】
食中毒細菌・ウイルスによる院内感染
桜山 豊夫
1
1東京都福祉保健局
pp.388-389
発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101960
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●食中毒について
食中毒といっても,フグやキノコによる自然毒食中毒や,メタミドホスのような化学物質による食中毒は,感染していく性質のものではないので,当然ながら院内感染対策とは関係ありません.食品衛生法では,食中毒そのものを直接定義してはいません.ただ食中毒患者を診断した医師の届出義務を規定した第58条では,食品に起因して中毒した患者を食中毒患者としています.中毒とは何か,という問題もありますが,一般的には「飲食物に起因する健康障害」を「食中毒」とすることが多いのではないのでしょうか.
細菌やウイルスを原因とする食中毒は,飲食物を原因とする経口感染症でもあるわけですが,従来は,細菌性食中毒の原因となる病原体には,発症菌量の多い細菌が挙げられていました.喫食前に食品中で,発症するに十分な菌量にまで増殖するもの(感染型),あるいは食品中で菌が増殖する時に中毒を発生するに十分な量の毒素を産生するもの(毒素型),が中心と考えられていました.前者としては腸炎ビブリオ食中毒,後者としてはブドウ球菌性食中毒などがあります.これらの細菌は,単に食品を汚染しただけで健康障害を起こすことは少なく,汚染後に食品中で増殖や毒素産生のための十分な時間と温度条件が必要です.このため調理後速やかに喫食した場合は,食中毒を起こす危険性は極めて低いと考えられます.
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