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概況・特徴,発生状況
日本国内のノロウイルスに関する疫学データは,①食中毒統計1),②感染症発生動向調査週報(Infection Diseases Weekly Report;IDWR)2),③病原微生物検出情報(Infectious Agents Surveillance Report;IASR)3)(月報)の3つがある.このうち①は医師の届け出によって保健所が調査報告した国内のノロウイルスによる集団食中毒が捉えられており,厚生労働省が集計し,公表している.②は,全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から報告される感染性胃腸炎(感染症法上の5類感染症定点把握疾患)の患者数に関する情報で,種々のウイルスや細菌の感染に伴う胃腸炎患者の発生動向が把握されている.したがって,必ずしもノロウイルス感染に伴う患者の発生状況とは限らない.③では全国の地方衛生研究所等で検査・確認された散発例や集団発生からのノロウイルス検出が捉えられている.②および③は国立感染症研究所より公表されており,食中毒の他に感染症についても網羅しているため,ノロウイルス食中毒に限定した集計としては厚生労働省が公表している「ノロウイルスに関するQ & A」4)内の参考資料,もしくはノロウイルスによる食中毒発生状況5)が分かりやすくまとめられた集計となっている.
2015年の食中毒発生状況は,事件数1,202件,患者数22,718人が報告されており,ノロウイルスを原因とするものは事件数481件,患者数14,876人で,事件数,患者数ともに第1位となっている.原因となった施設は飲食店が最も多く,事件数352件(73%),患者数9,023人(61%)となっており,仕出屋,旅館,事業場と続いている(図1).2011〜2016年に報告された大規模食中毒を患者数の多い順に並べると(表1),2012年12月の広島県で起きた弁当の事件や,2014年1月の静岡県で起きた食パンの事件など,上位20事件のうち9事件がノロウイルスを原因としており,毎年のように大規模食中毒事件が発生している.毎年11〜3月の冬季に大きな流行があるが,年間を通して発生し,夏季にも集団発生が報告されている.
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