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Ⅰ.初めに
「失語症患者への接しかた」「コミュニケーションの取りかた」などは,かなり以前から取り上げられ,論じられてきているテーマである.そして,“こうすれば良いはず”という「一般論」は,ほぼ書き尽くされていると言ってよい.
それらはどちらかと言うと患者の家族向けに書かれたものがほとんどであり,まず失語症をよく理解する必要があることが強調されている.また,失語症患者に接するうえでの心構えや望ましい態度,さらに具体的にどのようにして意志の疎通を図るかという実践論が述べられている.その点においては,すでに本誌に綿森1)や遠藤2),それに筆者ら3)が具体的に書いているので参照していただきたい.成書では遠藤4)や竹内ら5)の解説が要領良くまとめてあるので,興味のある方には一読をお勧めする.
さて,それはそれとして,これらはやはりどれも「一般論」であるだけに理学療法や作業療法の臨床の現場でどれほど,具体的に利用できるかというと心細いように思える.
筆者は,この稿をまとめるに当たって,「一般論」を再び論じることは避けたいと考えた.そして,まず自分の担当している比較的重症な失語症患者の理学療法の訓練を虚心坦懐に見学させてもらうことからスタートした.理学療法士はどうやって失語症の患者とコミュニケートしているのか,訓練の現場から問題点の発見をし,整理をしてみようという訳である.今回は,その結果の一部を紹介しつつ,言語療法士の目(あるいはセンス)で感じたこと,考えたことを中心になるべく具体的に書いてみたい.(なお,今回ここで述べるのは,あくまでも当院の理学療法の訓練の一部を観察した結果であること,それに作業療法の訓練をみていないので,作業療法の訓練場面にはまた違った問題点があるかも知れないが,それにはふれていないこと,以上の二点をお断わりしておきたい.)
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