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Ⅰ.はじめに
理学療法(PT)や作業療法(OT)において用いられる種々の運動は,呼吸・循環系や筋・骨格系に対して負荷をもたらす.この負荷が妥当なものであれば,運動による効果は最大となる.しかし,呼吸・循環系や筋・骨格系に対する負荷が適切ではない場合,すなわち呼吸・循環系や筋・骨格系の機能が正常であっても,これらに対する負荷が異常(過剰または過少)であったり,呼吸・循環系や筋・骨格系の機能が正常な場合には妥当と考えられる負荷が,異常な呼吸・循環系や筋・骨格系に加わった場合には,重大な「運動による副作用」が生じ,リハビリテーションの円滑な遂行が阻害される.PTやOTに際して生じる「運動による副作用」は,後者において発生する可能性が高い.このような「運動による副作用」を予防するためには,病的な呼吸・循環系や筋・骨格系に対する負荷を適切なものとするための運動処方注)が必要であるが,リハビリテーション医学において,これを行うための基準としては,Anderson1)や土肥2)によるものがあるのみである.このため,呼吸・循環系や筋・骨格系の異常を有する患者のPTやOTに際しては「疲れない範囲で」とか「mildに」といった曖昧な表現での運動処方がなされる場合が多いのが現状であろう.リハビリテーション医学における運動処方が,より科学的に,より厳密に行われるためには,運動が身体諸器官に対して及ぼす影響について熟知しておくことが重要となる.本稿では,運動と循環系との関係に焦点を絞り,①運動による循環系の反応に関与する機構,②運動様式の差異が循環系の反応に及ぼす影響,③杖歩行が循環系に及ぼす影響,④運動処方のための基準について,述べてみたい.
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