Japanese
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講座
歩行(基礎から臨床まで) 1.歩行の生体力学(1)歩行分析の目的,歴史,方法
Gait-From Basic Studies to Clinical Assessment. 1. Biomechanics of Gait (1) Objective, history and method for gait analysis
飯田 勝
1
Masaru IIDA
1
1埼玉県障害者リハビリテーションセンター
1Saitama Rehabilitation Center for the Disabled.
pp.40-46
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103490
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Ⅰ.はじめに
人間の歩行は,ある場所から他の場所へ,最少限の重心上下動と消費エネルギーで,外観上見かけよく安定して前進する運動で重要な日常基本動作の一つである.一見単純に見え,内部で行われている複雑な制禦を感じさせないが,実際は神経筋系の微妙な協調運動のもとで,安定した立位平衡が失われたり,得られる現象が起こっており,これは,長年くり返しの学習によって獲得されたものである.
T. Popovaは,成長課程の子供の歩行を研究して,三つに分類し,成人歩行パターンは,7歳から9歳になって獲得されると述べている3).この年齢まで,子供は,自分の神経筋骨格系の成長に伴う変化を修正し,より良い神経制禦を発達させているが,一度学習されてしまうと,ほぼ他人と似たものとなり,人それぞれ,外部から区別できる程度の特徴は,あるが,他人と比べその差はわずかで,正常歩行として,ある範疇に入ってくる2).進化課程から見ると,初期の四点歩行で,重心は四本の支持足で囲まれた床面内にあり,体は後足の押しと前足の引きにより前進する.
前足の支持機能を放棄した二足歩行は,支持足面に重心を持ち,上肢は骨盤上に躯幹のバランスを保つのに役立ち,下肢が移動機能をはたす.前進は,足と床面の間に働く床反力が,水平と垂直方向に加速するよう働くために,床面と斜下に下肢を動かす必要がある.そのため,下肢は伸展され重心は,水平垂直分力で,上前方へ移動する,従って,その歩行は,前進挙上の複合運動といえ,二足歩行では,交互に推進と制動が行われている6).
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