とびら
心と身体
三好 宣明
1,2
1東京都立府中病院神経科
2東京都立松沢病院リハビリ科
pp.3
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103474
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この道に入ってから早くも20年近い月日が過ぎようとしている.医学部の学生時代には,心と身体の両者の関わる診療科に進もうと思っていたのだが,国家試験に受かったところ,実際には精神科に進んでしまい,心の病のみ扱うようになってしまった.とは言うものの,「初心忘るるべからず」ということなのであろうか,大学の医局を知らずに精神病院を歩いて来た筆者にとり一番抵抗感のある言葉は「心気的」という言葉である.たびたび患者が身体的訴えをしてくる時に,精神科医はしばしばこの一言で片附けてしまうことが多い.その訴えをきちんと処理する医師でも,その検査結果が異常なしということになると,再度その訴えがあった時には「心気的」という言葉を使ってしまうのであろう.かくのごとく,心の病を扱う精神科医は,「心」の方に気をとられて身体の存在を忘れてしまい,心と身体を切り離した発想をしがちである.かく言う筆者も,常日頃,「人間とは,心と身体が一体となった存在である」と考えるようにしているつもりであるが,ともすると前述のごとき失敗をすることがある.
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