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はじめに
歩行分析に関しては,今までに多くの研究や報告が発表されている.本誌においても何度か特集が行われ,歩行分析システムの紹介や,歴史,文献1~2)などについても筆者が担当した.また歩行の分析データについても諸種の研究が紹介されている3).特に,工業技術院の委託による医療福祉機器研究所のプロジェクトで完成された身体障害者用機能回復訓練装置は歩行分析システムとして,始めて国レベルでの一貫したフイロソフイーを持った医工協力の成果として,ソフトウエアを含めて高い評価を受けている.しかし,これは,システムとしての評価であって,これが,どの程度,実際の臨床の場で有効な働きをするかは今後のソフトウエアの開発にかかっているといえよう.
ソフトウエアに関しては調査研究報告書に窪田ら4)が述べているように,医工協力とはいえ,どちらかといえば工学主導型の論文の方が多く,臨床例についても医師のみによる論文が少ないのは,ハードウエアの理解や,データ処理方法に関する細部の知識が医師側に不十分であったためと思われる.
従って,工学系のまとめたデータを利用することのみに医師側が頼り過ぎたきらいがないとはいえない.しかし,工学側にしてみれば,臨床側のニーズがどのようなものかが明確に把握できないまま,結果が利用され,まとまってみると,思いもかけなかった落し穴が生じたり,全く見当違いの知見が出されたりして戸惑うことがあったりした.
そこで,本稿においては,このようなデータ処理および歩行計測の際に,特に医師側に理解してほしい点について,工学側の希望を含めて解説してみたい.
これから述べることは,歩行分析システムを作る場合に,工学側の見落し易い点を強調してあることを念頭において読まれることを希望する.
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