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Ⅰ.はじめに
歩行解析は今日までに多くの研究者によって成されてきた.この膨大にして,極めて困難な問題と取り組む時,その解析の目的を明確にして後,方法論・技術論の問題と取り組まなければならない.先人達の歩んだ業績を検討するとき,その方法論,技術論の多様性に驚かされる.臨床の場面で患者の歩行能力を評価する場合,患者を歩かせて歩容を観察し,患者自身の訴えを聞いて評価を行うやり方が一般的である.熟練した臨床家であれば,疾病のおおよその見当がつき本質的には臨床上大きな過まちを犯すことはない.むしろ簡便で金や時間のかからない観察こそ一般の臨床場面では強調されるべきである.が,観察に加えて数多くの客観的なデータがそろっていると,その評価の信頼性は当然のことながら一段と増加することになる.つまり人間の歩行動作を定量的に把握できるならば,特に下肢疾患の治療方針の決定や,訓練プログラムの作製,および訓練そのものに有効であり,効果判定にも役立つ.そこで,歩行を生体力学的に,より定量的にとらえようとの考え方が近年の電子工学や,情報工学(特にコンピュータ)のめざましい進歩にともない国内外の大学,公的研究機関,病院などで行われている.今回,筆者等に与えられたテーマは義足歩行を生体力学的にとらえるようにとのことであるが,表11)に示すような,生体力学全般にわたって評価することは不可能に近いし,臨床の場面では必ずしも必要としないパラメータも含まれている.一方,義足歩行の評価はあまりにも多い不確定要素が生体側に存在していて,画一的な表現は更にむずかしい.カルフォルニア大学の工学者Radcliffeは下肢切断者の代表的な切断部位である股離断,大腿切断,下腿切断,サイム切断の力学的特性とそれぞれの代表的義足に関する基礎力学から応用に至るまで詳しく解説を加えているので本稿では文献の紹介にとどめる2~3).
国内においても義足歩行の評価にフォースプレートを使って力学的に解析したものに,岩井,盛合,山本等の報告がみられる5~7).本稿では筆者等の研究所で実際に使用している歩行解析のセンサーや測定装置でとらえられた健常者のデータを参考に提示し,臨床応用の目的に使用されている生体力学的なとらえ方の数例についてその特徴をのべる.
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