The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 12, Issue 2
(February 1978)
Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.序
関節可動域(ROM)テストは,患者の基本的身体機能を計測する一手段として,作業療法士(OT),理学療法士(PT),医師等によって広く利用されている.ROM計測には一般にゴニオメターが使われ,測定結果については5度の誤差は許される,と教えられた(Nash,1966).私達は,学生にROMテストを教えた経験から,測定誤差を5度以下に抑えることが非常に困難であることを知り,これまで5度以下の誤差は許される,と言われたことを,我々自身に5度以下の誤差で計測する能力がある,ということと取り違えていたのではないかとの疑問を抱き始めた.この研究の目的は,現場で働く23人のOTの,同一被検者に対する検者間のROM測定値の差,及び同一検者によるテスト―再テストの値の差がどの程度であるかを調べることである.
Cole(1971)は,「角度の計測は,熟練した人間が特殊な道具を用い,しかも時間をかけておこなわないかぎり,3~5度の誤差はやむを得ない」と述べ,その根拠として,Hellenbrandtの研究を示し,標準的な訓練を受けたPTの誤差の平均が4.75度,熟練したPTでは3.76度,普通の医師では5度であった,という結果を示している.Licht(1965)は,その著書「運動療法」の中で,幅広い文献考察を行なっているが,Cole(1971)と同じくHellenbrandtの結果を示すとともに,WilmerとElkinsの,「計測誤差は10度以内ではあり得ない」とする意見等も紹介している.
Low(1976)は,自分自身の左肘屈曲及び手関節伸展を,50人の検者(PT,PT教師,PT学生等)に計測させた結果を示しているが,それによれば,肘屈曲の検者間最大差は25度,平均誤差は5度,標準偏差は6度であり,また,手関節伸展は,検者間最大差が60度,平均誤差は7.8度,標準偏差は10.5度であった.更に,50人中無作為に選ばれた5人の検者に10回の計測をさせ,同―検者によるテスト―再テストの差を調べたが,それによれば平均誤差は0.6~3.3度で,検者間差よりも少ないことを示した.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.