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1.はじめに
成人片麻痺が,我が国におけるリハビリテーションの主要な対象となって以来,その治療技術には多くの方法が用いられて来た.その中でも,ファシリテーション・テクニックと呼ばれる手技が,広く用いられるに至った.特に我が国においては,1960年の土屋1)によるPNFの紹介以来,初期の報告2~4)はほとんど片麻痺に対するものであった事は注目に値する.その後,脳性麻痺にもかなりファシリテーション・テクニックが普及して来たのも周知の事実である.しかし,成人片麻痺はその数も多く,リハビリテーションによって一定程度の成績をあげ得ることを多くの成績が示している.一方,その成績の向上をめざすためには,一層の努力と技術の向上が必要である事も確かである.我が国においては,片麻痺の病態生理の解明,その根底をなす神経生理学的知識の普及などにより,成人片麻痺に対するファシリテーション・テクニックの適応は益々拡大しているのが現状である.
そこで今回,成人片麻痺に対するファシリテーション・テクニックの効果について検討し,体系的な適用について考えてみたい.
まず,ファシリテーション・テクニックを論ずる際に考慮すべき問題は,次のようなものがあげられる.
1.対象の選定
2.方法の選択
3.技術の質
4.治療期間および時間
5.その他
成人片麻痺という言葉で表せる対象も,ファシリテーション・テクニックを行うに当っては,麻痺の程度をはじめとするImpairmentの状況はもとより,多くの因子の組み合せにより,対象の幅は限りなく広い.また,方法についても,上田5)が指摘するように共通性は認め台えても,対象との関係,3であげたような施行者の技術と方法の関係などにより,方法の選択もファシリテーション・テクニックの効果に大きな影響を及ぼすと考えられる.さらに,技術の質に至っては,実際に方法を習得した過程も異なり,日常の経験による差もかなりあると思われる.また,これらの技術をどの程度患者に行い得たかについては,治療期間と治療時間にかかわってくる.このように多くの複雑な条件を考慮に入れながら,ファシリテーションの問題を検討する必要がある.
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