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はじめに
中枢性神経疾患に対する治療の1つとして種々のneurophysiological approachが報告されており,その共通点として,a)中枢神経活動の促通,抑制のための感覚入力に操作を加える,b)個々の筋,関節の運動よりも全体の協調性のある運動の治療に重点をおく,c)神経発達的概念を応用する,d)心理学,とくに条件づけ,反復,強化応答の汎化,あるいは練習にさいして自分の方向,目標,およびその結果を知ることなど,学習の理論を応用する,e)治療は連続した変化の過程とする,があげられる1,2).
Bobathは1950年痙性麻痺―反射的抑制を利用しての治療,1954年異常な反射的動作の抑制による脳性麻痺の治療,中枢神経系損傷患者による異常姿勢反射活動の研究3)を発表している.筆者が初めてDr. Bobathに接したのは1972年愛知コロニー記念講演会であり,以後講習会(東京1972年),Bobath夫妻による早期治療セミナー(大阪1973年)で研修を受けた.セミナーの内でBobath夫妻から意識的なものか否かは不明であるが「抑制」という語が全くといってよい程聞かれなかった.治療と評価を常に結びつけて考えること,運動を姿勢の発達としてみること,治療は正常発達のコピーではない,発達の順序を追うのではなく協調性パターンをみると,disabilityとしてではなく,abilityという立場(何ができないかではなく,何ができるか)からCPをとらえたい,動きを学習するのではなく,動きの感覚を学習することである,個々のCPの人間性について考えること,乳児は反射の塊ではない,等を強調されたことが今でも耳に残っている.
1980年および1983年に成人片麻痺運動療法研究会(2週コース),成人片麻痺補習講習会(1週コース)の研修に多くの理学療法士達と共に参加した.受講した目的は成人片麻痺に対するBobathアプローチの効果の判定,限界,適応を知ることであった.参加した人達は重度の症例に対するアプローチの仕方,慢性期のものは治らないということに対する批判に答えるために,在宅のケースをみるにつけ自責の念にかられて,健側中心にしたアプローチに限界を感じて,上肢改善のためどのようなアプローチをするべきか,自己満足の解消のため,one way patternの改善のため,などを参加理由としてあげていた.この研修会に参加したことで筆者は治療という立場でのspasticityとは何か,Bobathの言うtonic spasmとは何かについておぼろげながら理解した.即ちspasticityによる運動障害は何かということをhandlingした患者を通して理解した.本文はBobathアプローチについて研修した事項,特に評価すべき項目についてまとめてみた.更に評価と治療は同時になされなければならないという立場から,治療への応用についても述べる.
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