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I.上腕義手・肩義手についての一般的な考え方
一般に切断部位が高部位になればなるほど,義手の操作が複雑で力も必要となるので,一側切断では,義手機能の限界もあって上肢動作の中でも補助的役割が主になる.しかし前腕切断とは異なり,上肢の長さが著しく違うことが姿勢等に影響し,ADL遂行上疲労や痛みに発展することからも義手の役割は大きく,またケースによるが,義手があたえる動的,静的な身体のバランス調節機能も激しい運動やスポーツを除き無視出来ない.生理的側彎も正常に見られるが,軽度に納まってしまうに越したことはない.
通念として義手装着訓練は早ければ早い程良いと言われているが,義手を使わないで時間が経つと片手での動作に馴れてしまい,義手装着をきらうケースが少くない.この原因と考えられることは,①適切な装着訓練を受ける機会に恵まれず,上肢機能の補助として役立てるに至らなかった.②特に能動義手は,国産パーツにも一因するがメインテナンス不足による故障対策が皆無に近い.③パーソナリティーや知的レベルの原因で理解して義手の受け入れが出来ない.④ソケットにより皮膚が覆われ夏期の発汗による不愉快さや感覚がマスクされる.⑤肩こりや疲労に見られる,義手重量及びハーネスによる身体への負担.⑥片手動作が確立しており,ADLの一部をあきらめている者や,義手に出合うチャンスの無かったことがその原因として挙げられるが,⑥に関しては,義手を使用していない一側の切断者のほとんどにあてはめることが出来る.確かに手部切断の軽度の者や,肩周辺の高部位で切断された者に対する現在義手機能の低さもあり“役に立たない”の一言が全てを言い表わしているようであるが,義手を良く使用している人は“役に立たないが,しかし義手が無くては困る”と言う.つまり『義手は手に比へて程遠い=手の代りとしては役立たない,がしかし上肢動作の補助(まれに主動作)としては無くてはならない』と考えている.
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