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講座
運動学シリーズⅠ 歩行(2)
Kinesiology of Gait
松村 秩
1
Satoshi MATSUMURA
1
1都養育院付属病院リハビリテーション部
pp.223-228
発行日 1975年4月15日
Published Date 1975/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100991
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はじめに
歩行の研究は歴史的にみて2つの方法によっておこなわれてきたと云ってよい.歩行時に生じる運動を外から形態学的にとらえる方法が先ずあり,のちに力学的に分析するやり方である.第1の方法はKinematicsの立場で歩行運動の身体各部の動的変化を映画的手法を使って分析するやり方である.他の1つは歩行時に作用する力を生体力学的に分析するKineticsの立場である.その力は重力によって外から生じるものと,筋収縮による生体内に生じるものと両者がある.
先ずInmam,Eherhart等によるカリフォルニア・グループによる研究や,Steindlerによってまとめられたものを基礎にして,主としてKinematicな方法と筋電図による筋収縮の電気的活動の記録から,歩行についての基本的な要素や歩行の諸相ならびに歩行の諸因子について述べてみることにする.
steindlerによると歩行は,次のように定義されている.
正常歩行とは身体を一点から他の一点に移動させるために,2本の下肢で行なうリズミカルな運動のことを云う.そのためには下肢が伸長したり,短縮したりすることが必要であり,関節の回旋運動によって移動がおこなわれる.また平衡作用が交互に失われたり,回復したりするのであるが,平衡する力が失われるのは,上体を前傾させて下肢の支持面積の枠外に体の重心が移動するからであり,回復するのは体の重心が移動した支持面積の枠内に再び戻るからである.
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