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はじめに
Pre-voc. OTは,医学的リハビリテーションから社会的リハビリテーションへの橋渡し役として重要な位置にあると思われる.一般的には,病気傷害の治癒が順調で意欲が出てくれば,障害が残ったとしても次には仕事を考える.できる事をさがすだろう.そして,自分から職場をさがすかもしれない.OTはそこで職業カウンセラーらと協力し,バトンタッチもできるわけだ.
ところが,ここに言う四肢マヒ患者(頚髄損傷)の場合ではそうはいかない.障害が重すぎて意欲換起が困難なばかりか,身辺処理ができない.そのため“仕事”は遠い先のよそ事で,帰る家も,社会の受け入れ体制もない.望む様な受け入れ体制は待っていてできてくる訳もなく,とどのつまり,自分で切り開くよりないと諦らめる.これが四肢マヒ患者の現実である.
医学の限界性の中から社会を見すえて何ができるのか,又,四肢マヒ患者が平等な人間として,働かずとも生きられる社会状況は,いかにしてつくるのか.これこそPre-voc. OTの視点であり,厳しい課題でもある.資本主義体制下では営利優先,能力中心に事が動くので,働こうと思えば,残された機能としての知的面を生かすよりない.頚髄損傷でも電話,タイプが使える事はすでに定説,実証済である.又,これらの機能を生かしきるには,後述の生活,社会,環境条件を充分に整える事が必須である.この両面がなくては,職業への道は遠い.そうでなくとも,身体的社会的制約を負った大へんな道なのである.
ケースの個人的能力に依存した,これまでの数少ない経験から普遍妥当性を導き出すのはもとより困難だが,こげつきベット,つまり頚損ケースの増加傾向や,その渦中に巻き込まれつつある現状に直面しながら,問題点をまとめてみたいと思う.
そもそも職場としての受け入れ体制のない所に職業前分野も存在しない訳だが,本人側の条件,能力開発をぎりぎりの所までおし進める事と,とりまく社会状況をいかに変革するかの両面の兼ね合いを考えながら,四肢マヒ患者のPre-voc. OTを考えてみたい.
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