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はじめに
リハビリテーションをすすめていく過程で,障害の程度はおのおのによって異なるが,なんらかの程度の障害をもって,家庭にもどらなければならない患者がいる.特に脳血管障害の患者では,マヒが重度であればあるほど,その占める問題は大きい.そのため家庭に帰ってからの患者のADLやケアをどのようにすれば,安全かつ介助者の負担がかからずにできるかなど,患者ばかりでなく患者の家族やその家屋を含めて,広範囲にわたって,早期からこの問題について考えておかなければならない.したがって患者の家族は,患者の入院と同時に,リハビリテーションの過程のプログラムの最初から,含まれていることが最も望ましい.
患者の状態がよくなって週末に一時的に外泊が可能になったとき,家族が患者の状態をあらかじめ把握していることは,外泊中の間,患者にも家族にも安心感を与える.前もって家族に病院に来ることを勧め,その時点での患者のADLの状態,患者が車イスを用いているか,歩行可能な状態か,耐容性の程度はどうであるか,自信の程度はどうかなどにつき1-2時間の間,実地に実際に見学してもらうとよい.セラピストはこのとき,患者の能力の程度につき家族に対して明確に,実際にどの程度であれば,危険なく患者が動作が可能であるか,その状態を家族に説明し理解してもらう.これによって,患者が家庭に帰ったときの家族の過保護を防ぐとともに,患者自身の家族に対しての依頼心を少なくする.また,この見学は,家族にとって家庭内での患者に関係した動作のなかで,十分に安全な方法で,どこまで正確に患者が行なえるか,その範囲とありのままの患者の状態を知ることにより,患者に対しての家族への不安を少なくすることにもなる.
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