スピーチリハビリテーション講座・2
難聴・脳性マヒ
神山 五郎
1,3
,
佃 一郎
2
1厚生省
2東京大学医学部耳鼻咽喉科
3国立聴力言語障害センター言語課
pp.70-73
発行日 1967年11月1日
Published Date 1967/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917458
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難聴
ことばの障害者のなかに,耳が遠いために,あるいは耳が遠くなったためにことばが上手にいえないという人びとがいます。これらの人びとを「難聴」と呼んでいます。難聴のうちでもとくに程度の重い人を「ろう」と呼んでいますので,難聴というのは比較的軽い聴覚障害者という意味にも使います。
私たちの耳の働きは他の感覚器官と比べますとかなり複雑な仕事をしております。たとえばピアノの鍵盤の88個の音の高低の聞きわけはできますし,また音が強いとか弱いとかの聞きくらべもできます。こうしたいろいろの働きを利用して,私たちはことばというものを学習していくわけです。そして学習したことばを使ってコミュニケーションを行ないます。ですから一口にいって,耳というのはいろいろな意味での心の窓口になるのです。難聴の人ではこの心の窓口がこわれていることになります。お役所の窓口業務に対する不平や不満がよくいわれております。能率の悪い,不親切な窓口ではインフォーメーションが歪んでしまったり,書類が消えてなくなることさえあります。難聴はちょうどこうした能率の悪い窓口と同じようなものです。ですから外から入ってきた音が歪んで聞えたり,音が小さくなったり,たとえ入ってきてもどんな音であるのか区別ができなかったりするのです。
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