特集 脊髄損傷
Driver Trainin
中村 雄
1
Yu NAKAMURA
1
1国立身体障害センター
pp.730-734
発行日 1973年10月15日
Published Date 1973/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100714
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1.身体障害者と自動車
動物は,自分で位置を「移動」する生物である,人間は,その「移動」をより楽に,より安全に,より敏速におこなおうとして,高速の乗物を追求する.歩行障害者は,この「移動」を求める人間の本性が身体的に制約されている.また人間は,周囲の大多数の者と同じような形態でいたいという願望をもっている.不本意に身体的に欠けた形態,欠けた能力の者は,健常者と同じ或る条件のもと(たとえば自動車を走らせているとき)だけでも同一視されたいという根強い願望をもっている.大多数の者と同一の状態にあると自覚できるとき,満足があり安定した情緒のなかにいることが可能となる.
自動車の普及は世界的であり,それは現実身近に誰もが知っている事実である.日本で使用されている自動車は2300万台に達している.今や都会だけでなく,村の農家でも各戸に1~2台もっている時代である.自動車は,文明社会における社会生活,経済活動,生活手段に不可欠のものとなっている.身体障害者が一般健常者と同じように自動車を自ら動かし利用しようと念願することは当然である.
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