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Ⅰ.緒言
頭部打撃によつて起こる側頭骨の骨折には,二つの型があると考えられている。第一は,側頭骨鱗状部より錐体の前面をその長軸に平行して走る骨折,いわゆる側頭骨縦骨折であり,第二は,錐体の後面より前面へと,その長軸を垂直に通つて走る骨折,いわゆる側頭骨横骨折である。この際前者では,しばしば中耳が損傷を受けるのでそれを中耳骨折と呼び,後者では,内耳が損傷を受けるのでそれを内耳骨折と呼ぶことがある。しかし,これら側頭骨の骨折は,骨折線をX線上に発見することは困難で,一般に適切なX線撮影が行なわれた時の縦骨折の骨折線発見率は75%,横骨折は50%といわれている。すなわちX線上における骨折線の確認は,本症の臨床診断においては必ずしも絶対的なものとはいえないのである。
最近われわれは,173例の頭部外傷後の聴覚障害症例に接したが,その中でX線上に明らかな横骨折線を確認し得た例が2例あつた。本稿はその2例についての報告である。
We reported on the subjective symptoms, findings of X-ray picture and the results of vestibular function test in two cases of transverse fracture of the temporal bone. We could find clearly the line of fracture in X-ray picture. Both cases showed the severe deafness and disorder of vestibular function in the fractured side.
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