特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
慢性副鼻腔炎の化学療法に就て
大藤 敏三
1
1日本医科大学
pp.720-726
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201245
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Ⅰ.緒言
慢性副鼻腔炎に対する化学療法の効果に関し外国文献に見られる最近の報告はむしろ否定的なものが多い。藥物の経皮的或は経口的投与がやゝもすれば局所に於ける有効量の保持を困難ならしめ治療効果を著しく低下せしめる事は本邦に於ても全く意見を等しくするものであるが,局所療法をも否定しようとする最近の外国文献の綜括的な結論は次の如き3つの理由にその根拠を有するのである。即ち,
1)局所に藥物を注入しても藥物は長時間局所に停滞することを得ず,炎性産物と共に洞外に排泄されるであろうと云う事。
2)洞内に注入した藥物は炎性産物の介在により直接病変部と接触を保ち得ないであろうと云う事,そして更に
3)慢性炎症によって吸收能力に低下を来した粘膜は注入された藥剤の有効量を吸收し得ず,従つて充分な藥治作用を発揮せしめ得ぬであろうと云う事である。
以上の如き停滞,接着,吸收の3問題は局所化学療法の成立に必須の基礎的条件であつて,これ等の条件の1つ1つが充たされずして充分な治療効果を收める事は出来ないのである。果して彼等の述べる如く慢性副鼻腔炎に於て此等の条件は総て満足され得ぬものであろうか?次は臨床効果の問題である。之には起炎菌の問題,洞粘膜の問題洞の大きさの問題,個人性の問題,之等相互の影響等,其臨床的効果は単一ではない。基礎的条件を中心として概括的な臨床的効果と結び付けた結論を出したものである。
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