特集 副鼻腔炎の病理と治療
慢性副鼻腔炎の機能検査
大藤 敏三
1
,
平野 一弥
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.886-906
発行日 1956年12月25日
Published Date 1956/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201687
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第1節 緒言
副鼻腔炎の中で殊に侵される頻度の高い副鼻腔は上顎洞と篩骨蜂窠である。此の両者の罹病状態を確認する事は副鼻腔炎の罹患程度を知り得て,其の診断上極めて重要な事である。然して篩骨蜂窠炎の診断は鼻内所見及レ線写真(単純撮影)にてほぼ決定されると西端教授も其の成書の中に指摘されて居り,吾々の数多くの臨症例も其れを肯定している。然しながら,上顎洞の病変は鼻内所見或ひは洞穿刺等に依つても判然としない事は日常多く経験する処である。又単純撮影レ線写真に於ける洞陰影の強度と,洞粘膜病変の強度とは常に相伴うものではなく,レ線写真にて洞粘膜の病的変化を明かに把握せんとして,過去幾多の研究がなされて来たが,満足の結果が得られず,最近に至り造影剤を応用して,洞の形態並びに機能を検索せんとする研究が行はれ,臨床上重要なる検査法として盛んに臨床的応用がなされる様になつた。
即ち,洞の位置及び形状並びに粘膜の肥厚状態を観察せんとして,本邦では久保(猪)教授(硫酸バリユーム),宮城,細田,中島,丸谷(臭素ナトリユーム),児玉(Moljodol)氏等を始め幾多の先人が副鼻腔に造影剤を注入したレ線検査成績を報告して居る。又,外国文献をみるに,Kelvie(1926),Goodyear,Froser等がLipiodol又はJodipinを注入し,レ線的に洞の大小,粘膜の肥厚状態をみて居る。然し,之等の造影方法に依つては,只単に洞の形態的変化を観察に過ぎなかつた。
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