特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
聽力改善手術の進歩
後藤 修二
1
1名古屋大学
pp.617-628
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201234
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聽力損失を手術的方法によって恢復せしめるという意味に於ては,聽力改善手術は内耳疾患に対しても行われているが,こゝに云う聽力改善手術というのは,鐙骨強直時に於ける内耳開窓術及び其他の各種中耳伝音障碍に於ける聽力恢復を目的とする中耳手術という意味にとつて記載することにする。又外耳道閉鎖症の樣に整形手術を必要とするものは別途記載する必要があるので,こゝには省略する。従つてこゝに取扱う聽力改善手術というのは耳硬化症及び炎症性耳硬化症に於ける鐙骨強直時の内耳開窓術,鼓膜穿孔の手術的治療としての鼓膜形成術,中耳伝音障碍に於ける伝音恢復手術である。
而して聽力改善手術として最も輝かしい成果を挙げたのは,内耳開窓術であるが,これは耳硬化症に対してのみ行われていたのであり,米国に於いては現在も本手術は耳硬化症に限られて用いられている。我国に於ける樣に耳硬化症と考えられる症例の少い国に於いては二次的鐙骨強直に対する本手術の適応の方が多い。而して欧州に於ては1950年頃からして,原因の如何を問わず鐙骨強直のものを内耳開窓術の適応として手術を行っており,我国に於ても炎症性鐙骨強直に対して1952年頃から内耳開窓が広く行われ始めた。
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