特集 難聽研究の進歩
迷路圧と聽力
大藤 敏三
1
,
坂本 秀生
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科
pp.627-635
発行日 1952年12月20日
Published Date 1952/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200811
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序説 夙に当教室に於ては内耳性難聽に対して髄液経由の治療が行はれ,その価値を証明する幾多の臨床例が得られ,又その実験的研究も之を裏付けて脳脊髄液と迷路をめぐつて解剖,病理,生理の広範囲に亘つて種々行はれて来たのであるが,未だ尚釈然としない点も多い状態であるので,今こゝに迷路生理,病理学上重要な意義を有すると考えられる所の迷路圧と聽力という問題を取上げて,改めて我々の研究を批判の爼上にのせてみることは甚だ意義あることゝ考えるものである。
而してこゝにいう迷路圧とは迷路静水圧の謂にして,これを左右し得る経路として血管系統,外耳道,中耳腔,三半規管瘻孔,頭蓋腔等が挙げられるが,特に蝸牛機能と関連して考えた場合,迷路圧の有する意義の重要性は血管系統,及び頭蓋腔との関係に於て再認識されるのである。即ち迷路外淋巴腔と頭蓋腔との自由なる交通の証明,血管性機序による内淋巴の生成,ライスネル氏膜の透過性等を考えた場合,迷路圧を構成する因子は脳脊髄液及び迷路血管と考えられるのである。
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