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緒言
小耳症及び先天性外耳道閉鎖症の患者に接して,臨床的に興味を感する点は,
(1)耳翼並に外耳道の整型,
(2)聽力増強,
(3)発生学的に外耳の畸型と中耳の構造との関係,
等であつて,本症の手術は外耳の整型と聽力増強の目的の為めに行はれるのである。之等の目的の為めの手術を行ふには,
(1)外耳及び中耳の発生学的な関係,
(2)聽力倹査による聽力状態,
(3)「レ」線学的に外耳道,鼓室及び乳樣蜂窠の解剖学的状態即ちPneumatisationの形態等を知つて置く必要がある.発生学の上から外耳及び中耳の成立に対しては,古くよりBroman氏の仮設が引用せられている.それによると第1図に図示せる如く,第1のKiemenbogen(mandibular arch)所謂Meckel's Cartilageから耳輪,耳珠,及び骨部並に軟骨部外耳道槌骨及び砧骨の小耳骨が出来ると考へられ,第2のKiemenbogen(hyoid arch)所謂Reichert's cartilageから対耳輪,対耳珠,耳朶及び馬鐙骨が出来ると考へられている.以上の仮説が事実と合致するや否やを症例に就て実際に検討して見る事は又興味のある事である.次に聽力検査により手術后の聽力回復の予后を推定する事が出来る.即ち室気伝導による聽力の残存しているものは手術による聽力回復の希みが大である.内耳欠損症の合併は極めて稀であるから骨伝導は一般によいが之の種の手術の予后の判定にはなりにくい.更に又「レントゲン」検査は手術による予后判定の上に重要であつて,Schiiller及びMayer氏撮影法が用ひられる.Schiiller氏撮影法では,内耳道のなす解明像に更に大きな輪廓の解明像が重なるのであつて之の大きな解明像は鼓室と外耳道とのなす輪廓であるから,この外側の大きな解明像の輪が認められた場合では鼓室の存在は確実である,Mayer氏撮影法では,鼓室の状態は更に明ふにする事が出来る.鼓室,外耳道深部の状態と共に槌骨の陰影も認めうる場合がある.以上の「レ」線像に於て,側頭骨外部蜂窠群のPneumatisationの状態を知る事は手術の難易並びにその聽力回復の予后を知る上に非常に重要である事は衣の症例に於て知り得た事である.「レントゲン」検査は,之の意味に於て重要な意義を有しているのである.以下症例3例に於て,以上の諸点に就て観察した処を要約して述べる事にする.
ABE reports 3 cases of microtic ear and congenital atresia of external auditory meatus. Attempts are made in plastic reconstruction of the auricle and the external auditory meatus.
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