扉
てんかん外科のデバイスギャップと診療報酬制度
岩崎 真樹
1
1国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科
pp.293-294
発行日 2020年4月10日
Published Date 2020/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204181
- 有料閲覧
- 文献概要
3年前から,日本てんかん学会および日本臨床神経生理学会の保険診療担当委員を務めている.この活動を通じて,わが国における医療機器の導入や診療報酬制度について,考えさせられる機会が多くなった.本稿を執筆時点で,2020年度診療報酬改定に向けた作業は大詰めを迎え,中央社会保険医療協議会(中医協)の答申を待つのみである*.
私はてんかん外科を専門にしているが,この領域は新しい医療機器の導入が遅れている.以前は“drug lag”という言葉がよく聞かれたが,薬剤の承認・導入スピードは改善され,わが国で使用できる抗てんかん薬は欧米諸国とほぼ変わらない状況である.しかし医療機器に関して,迷走神経刺激装置(vagus nerve stimulation:VNS)の導入は,米国の1997年に対し,わが国では2010年と10年以上の遅れがあった.近年は低侵襲機器の開発と導入が盛んであり,定位手術ロボット,MRIガイド下定位的レーザー温熱凝固装置,responsive neurostimulator(RNS)などが米国で盛んに使用されている.このうち定位手術ロボットについては,あるメーカーが2015年に薬事承認を得たものの,翌年には販売を中止するという事態があり,2019年に別のメーカーが再度薬事承認を得て販売を開始した.現在,米国や中国などでは定位手術ロボットの導入が急速に進んでいるが,日本における実績はほとんどない.後者の2つについては,具体的な日本への導入予定すらない.これらの医療機器は,いずれも開頭術あるいは大脳の切除術を不要とするものであり,導入と普及が望まれる.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.