コラム:医事法の扉
第31回 「管理義務」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.1053
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100843
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脳神経外科領域の医療過誤訴訟では,しばしば管理義務違反の有無が争点になります1).特に,術後管理と検査中の管理で問題となります.具体的には,ラトケ囊胞術後にドルミカム®で鎮静していたところ,心肺停止状態で発見され死亡し,術後管理(監視)義務違反を問われた事例(神戸地裁平成15年6月12日判決),椎骨動脈解離性動脈瘤の破裂によるくも膜下出血患者が術後にベッドから転落して急性硬膜下血腫を負い,結局,重症肺炎で死亡し,管理義務違反を問われた事例(前橋地裁平成16年8月27日判決),ガンマナイフの前処置としてのMRI撮影時に呼吸停止となり死亡し,撮影時の医師による監視義務違反を問われた事例(名古屋地裁平成19年6月13日判決)などがあります.
管理義務の法的根拠は,「委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務」(民法644条)という,いわゆる「善管注意義務」にあります.つまり,診療契約(準委任,656条)のもとでは,受任者たる医療者は,患者に不利益を生じさせないような高度な注意義務を負うこととなり,その1つが「管理義務」なのです.
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