コラム:医事法の扉
第11回 「診療録記載義務」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.289
発行日 2007年3月10日
Published Date 2007/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100433
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
「カルテはきちんと書くように」ということは,医師であれば誰でも必ず一度は注意されたことがあるのではないでしょうか.カルテが診療上,大変重要であることはいうまでもありませんが,法律上も,医師法24条1項に,「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない.」と規定され,「診療録記載義務」が明文化されています(医師法施行規則23条では,診療録の記載事項として,一 診療を受けた者の住所,氏名,性別および年齢,二 病名及び主要症状,三 治療方法(処方および処置),四 診療の年月日が規定されています).しかも,この義務に違反した場合には,「50万円以下の罰金」(33条の2)という罰則まで科せられてしまいます.
しかしながら,われわれ脳神経外科医は,忙しい日々の臨床において,診療内容のすべてをカルテに記録することは実際には不可能です.たしかに24条1項の条文をよく読むと,「診療に関する事項」と書いてありますが,「診療に関するす・べ・て・の・事項」とは書いてありません.このように,法は抽象的に規定することによって,医師に注意を喚起し法律上の義務を履行させようとするのが「ねらい」なのです.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.