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I.はじめに
電子伝達系および酸化的リン酸化系は生命活動に必要なエネルギーを供給する,いわば細胞内のエネルギープラントである。ミトコンドリアの酵素系はいわゆるhousekeeping enzymeと考えられ,細胞内に一定の量が維持され,際立った活性の変動は稀であるとみなされている。また,その欠損があればすぐさま細胞活動にきわめて重篤な影響を与えるであろうと予想されてきた。ところが,実際には電子伝達系の欠損が多くの症例において次々とみつかり,電子伝達系の異常がある程度許容されうるものであることがわかってきた。換言すれば,許容される程度の変異のみが,われわれの目の前に疾患として現われてくるともいえよう。したがって,ミトコンドリァ脳筋症,さらに広義の語でいえばミトコンドリア・サイトパチーにおける電子伝達系酵素の異常を考えるにあたっては,それをもたらしている変異を絶対的に異常なものとして捉えるのではなく,むしろ,正常から異常に至る連続したスペクトルを持った変異として位置づけるべきであろう。
本稿では最初に電子伝達系の概要を述べ,つづいてわれわれの研究室で行なっている電子伝達系の異常の検索法を紹介し,その結果明らかになったミトコンドリア・サイトパチーにおける電子伝達系酵素異常の特徴を挙げ,最後にそれらの知見に基づいて推定しうる酵素異常の原因について考察する。ミトコンドリア・サイトバチーの臨床面1,2),生化学的検討3〜9)についてはそれぞれの綜説を参照されたい。
Molecular abnormalities of mitochondrial elec-tron-transfer complexes were analyzed in tissues from patients with mitochondrial cytopathies using multiple approaches, i.e., enzyme activity measure-ment, spectrophotometry, EPR spectroscopy, im-munoblotting, immunoprecipitation, and immuno-histochemistry. The characteristic findings on analysis of the patients' mitochondria by these methods can be summarized as follows.
The contents of more than one subunit in the complex were decreased in all the patients studied.This is possibly due to the disturbance of the assembly of the whole complex caused by abnor-malities in some subunits which serve to anchor the complex to the inner membrane, resulting in a secondary deficiency of other subunits.
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