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特集 第9回脳のシンポジウム
主題:神経免疫疾患
脱髄疾患での二,三の問題—実験的アレルギー性脳脊髄炎の催起物質と脱髄抗体および髄鞘形成抑制因子との関係について
Relationship of encephalitogenic substances to the demyelinating and myelination inhibiting factors in experimental allergic encephalomyelitis
米沢 猛
1
,
斎田 孝彦
1
Takeshi YONEZAWA
1
,
Takahiko SAITA
1
1京都府立医科大学病理学教室
1Department of Pathology, Kyoto Prefectural University of Medicine
pp.1028-1032
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903565
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脱髄疾患に見られる特徴的な脱髄病変がアレルギー機序にもとづくことは,現在では一般に認められた考えである。実験的に脳白質のホモジェネートを動物に投与して生ずる実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)が猿を用いて成功して以来,このEAEの研究は数多くの人びとによって活発に行なわれて来た。そしてヒトの脱髄疾患—多発性硬化症,種痘後脳炎,傍感染性脳炎などの原因や発生病理の解明に多くの手がかりを与えて来た。そのなかでも狂犬病ワクチン投与によって生ずるヒトの脳炎は,EAE催起物質である中枢神経組織がワクチンに含有されていることと関連してこの疾患の動物モデルとしてEAEが理解されて来た。その病理所見を見ても狂犬病ワクチン接種後脳炎とEAEとは基本的に全く同一病像を示している。他の脱髄疾患においてもその病理像はこれら疾患と基本的に同一であり,小静脈周囲のリンパ球・単球の浸潤と脱髄病変を特徴とし,神経細胞や軸索の変化はほとんどないか,あるにしても髄鞘の病変に比しきわめて軽度のものである。したがってヒトの脱髄疾患に共通して存在する原因的因子が想定された。この作業仮設はEAE催起物質の探求という形をとって進められた。一方脱髄疾患の個々の型の差異を重視する動きは,同疾患での共通病変を原因的には異なるにせよ,発生病理の共通性として把握し,原因的共通性は一応否定的ないしは保留するという考えで進められて来た。
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