連載 神経病理アトラス・4
脱髄性脳脊髄炎の病理—その2
白木 博次
1
1東京大学脳研究所
pp.544-552
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201664
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急性多発硬化症とその近縁疾患 Acute Multiple Sclerosis & Allied Disorders:上部頸髄のほぼ全横断面が脱髄するが,pre-existentの髄鞘構築像は,なお認められなくはない①。しかし病巣内の前角の神経細胞は完全に近く残り,病的変化を示さず,実質内には桿状細胞が増え,静脈管のリンパ球浸潤がめだつ②。またtuber cinereumの前額断をみると,視索には広汎,融合性の不完全脱髄が生ずる③。この例は,単相型の視神経脊髄炎ともみられるが,脳幹,小脳,大脳などの白質にも脱髄巣が散発するので,急性多発硬化症の特長も明らかである。
弧状,弓状の奇妙な形態の脱髄巣が,左右対称性に橋・中脳境界の基底部に生じ,さらに導水管中心性の境界鮮明,融合性病巣を伴う④。中部延髄では,融合性大脱髄巣が,一側性に被蓋に,対側では第4脳室底に小病巣(↓)がみられる⑤。下部延髄では,左右対称性に翼状にのびる中心管中心性脱髄巣,また不規則形態,融合傾向の強い病巣が散発する⑥。小脳白質には小静脈中心性病巣のほかに⑦,一見,同心円硬化症を思わせる奇妙な形態の脱髄環が生じ,そのひとつは融合性のclosed circuit(↑)を形成し⑥⑧,gliosisは各病巣の辺縁部にいちじるしい⑨。また⑥の病巣に含まれる舌下神経核では,静脈管の細胞浸潤が顕著だが,一部ノイロノフアギーを伴う神経細胞はなおよく残る⑩。この例は大脳病巣を欠く。
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