Japanese
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特集 第9回脳のシンポジウム
主題:神経免疫疾患
指定討論:脱髄性疾患についての二,三の問題
Some problems on the demyelinating disease
井形 昭弘
1
Akihiro IGATA
1
1鹿児島大学医学部第三内科
1The Third Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Kagoshima University
pp.1033-1034
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903566
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Ⅰ.脱髄巣と髄液との関連
生体内で脱髄巣が成立するためには細胞性免疫が主役を演じ,実験的アレルギー性脳炎(EAE)にみられるごとき小静脈周囲のリンパ球浸潤が最初のステップで流血中の抗体にはあまり重要な意義はないと考えられている。しかし唯今の米沢先生の発表のごとくin vitroではEAEまたは多発性硬化症患者血清に脱髄作用のあることが認められている。さて,ここで私が問題としたいのは脱髄巣と髄液との関係である。従来多発性硬化症において脱髄巣の好発部位として側脳室壁,中脳水道周囲,第四脳室底などが知られているが,そのいずれも髄液に接した部であり,あたかも髄液がしみこむごとき脱髄巣が見られている。
われわれはまずこの点に注目し,わが国の多発性硬化症剖検例6例について大脳断面の脱髄巣を統計的に検討した。脱髄巣がもし白質内の静脈を中心に一様に発生するならば各脱髄巣の重心は,脳室の占める面積(白質面積の8.7%)に対応してその8.7%が脳室内に入るはずであるが,実測値ははるかに大きく,x2検定でも0.5%以下の危険率で脳室依存性が確かめられた。
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