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特集 慢性進行性神経疾患・Ⅱ
免疫
脱髄性疾患,とくに脱髄機序について
Demyelinating diseases on the mechanism of demyelination
米沢 猛
1
Takeshi YONEZAWA
1
1京都府立医科大学病理学教室
1Dept. of Path., Kyoto Prefectural Univ. Med.
pp.965-974
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903447
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脱髄性疾患とは脱髄性病変を主徴とする疾患ではあるが,この疾患を定義づけるには脱髄性病変の性格を明らかにする必要がある。周知のごとく脱髄性病変は種々の原因によって惹起される。しかし循環障害,中毒性病変として生じた脱髄性変化はたとえそれが主たる病変像であっても脱髄性疾患と見なされていない。それらはそれぞれ循環障害や中毒によって生じた変性像にすぎないからである。そして脱髄性疾患での脱髄性病変はこの脱髄そのものが一次的病変なのである。この変化は神経細胞や軸索の傷害に続いて末梢側に出現するワレル型の二次変性と対比されている。すなわち脱髄性病変の場合には一次的侵襲が髄鞘関連細胞ないし髄鞘に加わるため,髄鞘の破壊消失を来たすが,軸索そのものには病変は見られないかまたはきわめて軽微である。一方ワレル型の変性は一次的侵襲は神経細胞体や軸索にあり,髄鞘の変化は軸索の変性消失に続く二次変性である。
脱髄疾患の原因としてはアレルギー,中毒代謝障害などが挙げられるが,そのうち現在最も問題とされているものはアレルギー性機序によるものであろう。中毒性変化によるものは髄鞘の変化のみならず神経細胞や軸索の変化をも伴うものが多い。また代謝障害による髄鞘の変化は脱髄というよりはジストロフィーとして取りあげられている。したがって脱髄疾患はアレルギー機序による脱髄病変を主徴とする疾患に限られるようになって来ている。
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