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特集 神経疾患と脂質代謝
多発性硬化症と実験的アレルギー性脳脊髄炎における脂質
Lipids in multiple sclerosis and experimental allergic encephalomyelitis
永井 克孝
1
Yoshitaka NAGAI
1
1東京大学医科学研究所細胞化学研究部
1Department of Cell Chemistry, Institute of Medical Science, University of Tokyo
pp.517-526
発行日 1973年6月3日
Published Date 1973/6/3
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903516
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Ⅰ.多発性硬化症(Multiple Sclerosis MS)
1.はじめに
従来,日本におけるMSの頻度は欧米に較べて遙かに低く,しかも大脳よりは視束と脊髄に急性壊死像が認められる視束脊髄炎型1)が主で,欧米にみられる定型的MSと異なる2)とされてきた。しかし1967年の米沢ら3)の報告以来,定型的MSの剖検例が急激に増加してきているといわれる。また,その病因論にしても,slow virus infectionとして捉えようとする傾向が強くなってきている4)。脱髄性疾患の典型とされてきたMSと脂質との関係については,神経組織が脂質に冨むために早くから注目されてきたし,Swank(1950年)5),Sinclair(1956年)6)は,MSの病因を,不可欠脂肪酸摂取の低下による異常脂肪酸構成を持つ脂質の生成に求めようとし,文明諸国における食習慣の偏りが問題視された。ただ,こうした背景があるにもかかわらず,近年のクロマトグラフィーおよび機器分析を主力とする脂質分析法を応用した例は少なく,今後の展開が望まれる。なお,最近におけるMS研究の進歩については,別掲の著書を参照されたい7〜9)。
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