特集 神経学における最近の研究
<生化学>
実験的アレルギー性脳脊髄炎—その展望
永井 克孝
1
1東京都老人総合研究所生化学部
pp.742-744
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904916
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実験的アレルギー性脳脊髄炎(experimental allergic encephalomyelitis,EAE)は,これまで主に次の3つの視点を中心に研究がすすめられてきた。第1は,狂犬病ウイルス,日本脳炎ウイルスワクチンなど,脳を基剤とするワクチン接種により惹起される副作用としてのワクチン接種後脳炎(いわゆる後麻痺)の問題,第2に,多発性硬化症を中心とする脱髄性疾患のモデルとして,第3には,細胞媒介性(いわゆる遅延型過敏症型)自己免疫疾患の一典型としてである。
EAE誘起物質がミエリン蛋白の30%を占める塩基性蛋白質分子(myelin basic protein,MBP)で,臓器特異抗原であることが判明し,その全アミノ酸配列がEYLARら,CARNEGIEらによって決定されたのは1971年であった。それ以来7年を経た今日,この抗原分子に関する化学的研究の進歩には著しいものがあった1,2)。まず,モルモットに対する主要な誘起座が決定され,ついでウサギの場合が決定されたのを手始めとして,現在ラット,マウス,サルに対する相当部位が決定されつつある。いずれも,7〜12個のアミノ酸残基より構成されている。モルモット誘起座については,EYLAR,NAGAI,HASHIMらによって合成ペプチドレベルの研究が行なわれ,現在では必須アミノ酸残基も判明している3)。
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