- 有料閲覧
- 文献概要
Focal Spared Area
超音波検査上,肝臓に脂肪沈着がび漫性に生じた場合,エコー輝度の上昇とエコースポットの密度の増加により肝全体が高エコーとなり(bright liver),腎臓のエコーレベルに比べ明らかに高くなる(肝腎コントラスト陽性).さらに脂肪沈着が進むと肝内脈管の不明瞭化(vascular blurring),深部エコーの減衰(deep attenuation)が出現し,病理学的に脂肪肝とされている“すべての肝小葉の1/3以上の領域にわたって脂肪沈着がみられる”例では典型的な所見を呈してくる.脂肪沈着が軽い例では,ときにfocal spared areaあるいはseg―mental pseudo-tumor signなどと呼ばれる限局性の低エコー域が認められる.この領域は周囲脂肪組織に比べ脂肪浸潤が軽度ないしは認められていない領域であり,頻度的には10~30%程度の脂肪肝にみられると言われている.その診断は特徴的な形態や存在部位などから一般的には容易であるが,ときに肝腫瘍との鑑別で問題となることもある.その超音波所見としては,①類円形ないしは地図状,幾何学状あるいは虫食い様を呈し,②多くは胆嚢周囲(図1a)や肝門部内側区域(図1b)の肝表面と広く接しており,③内部あるいは辺縁に門脈や肝静脈が描写されることが多く,④脂肪肝の改善とともに低エコー域の増大が認められる.
Focal spared areaの成因としては門脈本幹を経由しない消化器からの静脈血(小腸吸収の栄養素を持たない静脈血)が直接,肝に流入することにより生じると言われており,胆嚢床より肝内門脈へと還流する胆嚢静脈,内側区域の肝門部へ直流入するpancreaticopyloroduodenal veinがその主因であると言われている.なお,focal spared areaは門脈血を欠き動脈血のみが供給されているところでも起こり得ると言われているが,原因が推定できないものもある(本誌2000;2:179―185,2001;3:75-79参照).
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.