講座
知っていると役に立つ超音波のサインと用語
一二三 倫郎
1
,
山根 隆明
2
,
森 秀明
3
1熊本赤十字病院消化器科
2熊本赤十字病院外科
3杏林大学第三内科
pp.264-265
発行日 2002年3月15日
Published Date 2002/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427900403
- 有料閲覧
- 文献概要
Fatty Bandless Sign
正常成人の超音波画像においては,肝と右腎との間に高エコー帯が明瞭に描出される(図1).この高エコー帯は肝と右腎の間に介在する腹膜・脂肪・筋膜(Gerota's fascia)など音響的性質の異なる各組織の境界面において起こる反射・散乱などによって形成される像と考えられている.したがってこの高エコー帯は,脂肪肝のように(近接する)肝の輝度が上昇すると,消失したり不明瞭になる.この現象をfattybandless sign陽性あるいはindistinct band sign 陽性といい,脂肪肝の重要な所見の1つとされている.脂肪肝の超音波診断は,高輝度肝(bright liver),深部エコー減衰(deep attenuation),肝腎コントラスト陽性(hepato-renal echo contrast陽性),肝内脈管の不明瞭化(vascular blurring)などの他の所見もあわせて総合的に判断すべきであるが,fatty bandless sign陽性所見は脂肪肝のfalse negative 防止に有用な所見と言われており,脂肪肝の超音波スクリーニングに極めて有用なサインと考えられる.なお,同意語的に用いられる用語として“masking sign”がある.これは本来,腎の高エコー腫瘤が腎被膜の高エコー帯に接して存在する際にその境界が不鮮明になる現象を表わし,腎腫瘤の被膜浸潤判定の困難性を表現する場合に用いられていたが,現在ではfatty bandless signあるいはindistinctband signなどとほぼ同じように用いられる傾向がある.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.