連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・10
悪性腫瘍とニューロパチー
佐藤 亮太
1
,
神田 隆
1
1山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
pp.75-79
発行日 2020年1月1日
Published Date 2020/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201480
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はじめに
悪性腫瘍が末梢神経障害を惹起する機序は3つある。①腫瘍による末梢神経幹の圧迫あるいは巻き込み,②腫瘍細胞の末梢神経実質内への浸潤,③腫瘍の遠隔効果,である。①は肺癌,特に肺尖部に多いパンコースト腫瘍が腕神経叢を巻き込むことなどに代表される。②については,末梢神経に直接浸潤する腫瘍は,ほとんどが悪性リンパ腫などの血液系由来の悪性腫瘍である。③の遠隔効果は,腫瘍細胞と神経細胞の共通抗原に対して,抗腫瘍免疫反応が交差反応を起こす機序が想定されている。悪性腫瘍は病初期に無症候で経過することが多く,唯一の症状が末梢神経障害である症例が存在するため注意を要する。末梢神経障害の精査を行うときは,鑑別疾患として悪性腫瘍を忘れてはいけない。悪性腫瘍を見逃さないためにも,画像検査を追加することが重要である。また,あらゆる検査で原因が特定できなかった症例において,フォローアップ中に悪性腫瘍が顕在化してくることを稀ながら経験する。このように末梢神経障害が悪性腫瘍の初期症状として出現することがあり,悪性腫瘍の早期発見/早期治療のためにも,悪性腫瘍に関連した末梢神経障害の知識を身につけておくことは重要である。そこで,連載第10回となる今回は,悪性腫瘍によるニューロパチー,傍腫瘍性ニューロパチーの病理所見を提示する。
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