連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・4
遺伝性ニューロパチー
佐藤 亮太
1
,
神田 隆
1
1山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
pp.820-824
発行日 2019年7月1日
Published Date 2019/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201356
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はじめに
最近の遺伝子検査の発展によって,遺伝性ニューロパチーの分子学的背景は次々と明らかになってきている。一般に遺伝性ニューロパチーは,ポルフィリン症などの一部の疾患を除けば,長い年月をかけてゆっくり進行し,通常は左右対称性の臨床症状を呈する。診断には遺伝子検査が優先されるため,現在では腓腹神経生検は実施されないことが多い。しかし,既知の遺伝性ニューロパチーであっても,腓腹神経病理所見から新たな知見が得られることがあり,非典型的な症状を呈する症例や,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)などの治療可能な疾患の合併が疑われる症例では,腓腹神経生検によって正確な診断が可能となる症例が存在する。また,既にCIDPなどの治療可能な疾患と診断した症例であっても,遺伝性ニューロパチーが背景に存在していないか再検討する場合に腓腹神経生検は威力を発揮する。遺伝性ニューロパチーの病理所見の特徴は,神経束間や同一神経束内で均一な神経変性が見られることであり,一部の疾患では疾患特異的な組織所見が確認される。連載第4回目となる今回は代表的な遺伝性ニューロパチーの腓腹神経病理所見を紹介する。
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