BRAIN and NERVE 72巻1号 (2020年1月)

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神田 『BRAIN and NERVE』は2019年4月から新しい編集体制となりました。どのような人がこの雑誌を作っているのだろうかということは,やはり読者の先生方も知りたいことだろうと思います。雑誌をめぐる状況もめまぐるしく変わる中,この雑誌のあり方なども含めて意思表明というか,そういったことを座談会という形で発信したいと思っています。ということで,まずは簡単に自己紹介からお願いしたいと思います。

特集 神経難病をクスリで治す—薬物開発の現況と近未来への展望

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特集の意図

「難病」は治療法が確立していない疾患群であるが,神経変性疾患の領域では,それぞれの疾患の原因蛋白が明らかになったことと並行して,モノクローナル抗体,核酸医薬が次々と開発されている。新薬候補の治験も進行中であり,不治の病から治療ができる疾患へと期待が集まる。多発性硬化症や視神経脊髄炎スペクトラム障害など,神経免疫疾患に対する新薬開発もめざましいものがある。2020年の幕開けに,代表的な神経疾患の成立機序仮説と,それに対応する薬物の作用機序,これからの展望を把握しておきたい。

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脳神経内科における最難治性疾患である。しかし家族性ALSの原因遺伝子の同定,モデル動物やiPS細胞を用いた病態解析が進展し新たな治療候補薬が次々と見出され,治験が実現している。多くは検証的段階であるが,家族性ALSに対する核酸治療など原因に根ざした有望な治療も出現間近である。わが国発のエダラボンが抗ALS薬として海外で採用され始め,いまやALSは最も治療研究開発が盛んな疾患の1つである。

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アルツハイマー病(AD)の臨床試験では,抗アミロイド療法薬や抗タウ療法薬を中心に多くの疾患修飾薬の治験が進められてきたが,ほとんどは失敗に終わっている。今後,効率的な臨床試験によって新薬の開発を成功させるためには,より早期の対象の登録,新しいバイオマーカーや評価基準,無益性解析やベイジアン・アダプティブ・デザインなどの革新的な試験デザインが必須である。

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パーキンソン病の治療研究の進歩は,目覚ましいものがある。しかし,いまだL-ドパ補充療法がゴールドスタンダードである。その最も大きな治療上の問題点が,ウェアリングオフやジスキネジアであり,それを改善するために持続注入ポンプや新しい剤型などを工夫する技術が開発されており,近年のトピックスである。同時に,よりそれらの副作用を制御する新規薬剤も多数開発されている。さらに,進行抑制治療薬に関しても,αシヌクレインに対する核酸療法,抗体療法を中心に世界中で検討されている。これらの治療効果を判定するうえでも,バイオマーカーの開発が急務である。

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多発性硬化症の治療の進歩はめざましく,この20年余りで多発性硬化症患者の臨床的再発および画像的再発は激減した。さらに近年では従来の早期多発性硬化症を対象とした再発抑制だけでなく,長期予後を見据えた晩期の神経変性の抑制も治療標的となりつつある。また,身体障害度の抑制のみならず改善を目標とした髄鞘再生医薬の開発も進んでおり,これら新規薬剤の臨床応用が待たれている。

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視神経脊髄炎は抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関わる自己免疫疾患で,中枢神経に生じる炎症性脱髄疾患である。2005年に抗AQP4抗体が発見される以前は視神経脊髄型多発性硬化症と呼ばれ,多発性硬化症の亜型として診断されていたため,視神経脊髄炎の治療薬として承認されたものはない。現在日本で4種類のモノクローナル抗体製剤が視神経脊髄炎の再発予防を目的に開発中であり,これらの特徴や臨床試験結果を概説する。

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過去の出来事を思い出せないときでも,その記憶の痕跡は脳内に残っていると考えられるが,自由に記憶痕跡を再活性化して想起を促進する方法は存在しない。中枢ヒスタミンは記憶・学習を調節する生理活性物質として注目されている。本総説では,中枢ヒスタミン神経系の概要と,ヒスタミンと記憶・学習の関係,特にヒスタミンによる記憶想起の促進について概説する。

連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・10

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はじめに

 悪性腫瘍が末梢神経障害を惹起する機序は3つある。①腫瘍による末梢神経幹の圧迫あるいは巻き込み,②腫瘍細胞の末梢神経実質内への浸潤,③腫瘍の遠隔効果,である。①は肺癌,特に肺尖部に多いパンコースト腫瘍が腕神経叢を巻き込むことなどに代表される。②については,末梢神経に直接浸潤する腫瘍は,ほとんどが悪性リンパ腫などの血液系由来の悪性腫瘍である。③の遠隔効果は,腫瘍細胞と神経細胞の共通抗原に対して,抗腫瘍免疫反応が交差反応を起こす機序が想定されている。悪性腫瘍は病初期に無症候で経過することが多く,唯一の症状が末梢神経障害である症例が存在するため注意を要する。末梢神経障害の精査を行うときは,鑑別疾患として悪性腫瘍を忘れてはいけない。悪性腫瘍を見逃さないためにも,画像検査を追加することが重要である。また,あらゆる検査で原因が特定できなかった症例において,フォローアップ中に悪性腫瘍が顕在化してくることを稀ながら経験する。このように末梢神経障害が悪性腫瘍の初期症状として出現することがあり,悪性腫瘍の早期発見/早期治療のためにも,悪性腫瘍に関連した末梢神経障害の知識を身につけておくことは重要である。そこで,連載第10回となる今回は,悪性腫瘍によるニューロパチー,傍腫瘍性ニューロパチーの病理所見を提示する。

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はじめに

 2019年9月22〜26日にフランスのニースで開催された,MDS(Movement Disorder Society)の国際学会には日本からもたくさんの参加がありました。その頃の東京はまだ猛暑の名残があり,フランスもパリでは40℃以上の猛暑であったと報道されていましたので,天候・気温を心配しておりましたが,ニースの最高気温は25〜26℃,天候もずっと晴れ,東京に比較して湿度が断然低いので,とても過ごしやすく感じました。

 私は汐田総合病院神経内科の菊池雷太先生と共著で作成したポスターを一緒に発表しました。また,東京慈恵会医科大学脳神経内科・教授に就任された村上秀友先生とは同じホテルでした。村上先生は,昭和大学で10年近く前に始めたパーキンソン病の認知機能障害研究の一環として,東京慈恵会医科大学が得意としている自律神経障害研究を合わせた新しいデータを示していました。写真1は村上先生と私の写真です。

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 解剖学は医学生が医学に接する最初の関門であり,医学に対する期待を実感する場でもあります。しかし,同時に膨大な専門用語に最初に接する場でもあり,暗記に陥りやすい場でもあります。場合によると無味乾燥に陥ってしまう「難関」でもあります。私自身の経験でも骨の突起の1つひとつをスケッチしてラテン語を付すという延々と続く作業にうんざりしてしまったことがあります。このたび発刊された『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』は,まさにこの解剖学の難関を突破する書であると思います。

 監訳者の中野 隆先生は,おそらく解剖学の教育にかけては,わが国の第一人者であると思います。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 下畑 享良
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 本号のゲラを拝読し,あらためて神経難病に対する本格的な薬物開発と臨床試験の時代に突入したことを実感した。さらに研究が発展し,脊髄性筋萎縮症におけるヌシネルセンのような,患者さんの人生を大きく変える疾患修飾薬が誕生することを期待したい。

 しかし新薬の開発は,神経難病における超高額医療の導入といった難しい問題を引き起こすことも認識する必要がある。例えば前述のヌシネルセンは1バイアル932万円で,年3回髄腔内投与する必要がある。米国では同疾患の2歳以下の小児の静脈内投与製剤として,2019年5月にzolgensma(AVXS101)が承認された。生涯1回の投与で済むものの,現在,最も高額な2億3000万円という薬価になった。またトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに対する国内初のsiRNA核酸医薬オンパットロは,1バイアル98万円,3週に1回点滴静注する必要があり,私の体重で計算すると年間4000万円近い費用がかかる。このような希少疾患に対する治療薬の上市は,薬剤費支出の増加を招く。

基本情報

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BRAIN and NERVE
72巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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